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● 安心なお米屋さん

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黄泉の国

黄泉の国

遺された伊耶那岐神は一人お悲しみになり、ついに、亡き伊耶那美神を追って黄泉の国(よみのくに)へお出掛けになりました。

すると、黄泉の国の、伊耶那美神がお住みになる御殿の固く閉じた扉が開き、伊耶那岐神は伊耶那美神と再会なされます。

伊耶那岐神が「美しい妻よ、私とあなたが作る国は、まだ出来上がっていない。一緒に帰ろう」と仰せになると、伊耶那美神は次のようにお答えになりました。「もう少し早く迎えに来て下されば良かったのですが、残念なことに、私は黄泉の国の食べ物を食べてしまったので、この世界の住人になってしまいました。もう戻ることはできません。

でもあなた様がせっかくいらしてくださったのですから、なんとか帰りたいと思います。黄泉の国の神々と相談してまいりますので、その間、決して私を見ないと約束して下さい」このように言い残して、伊耶那美神は御殿の戸をお閉めになりました。伊耶那岐神はしばらくはお待ちになりましたが、待てどくらせど、伊耶那美神はお戻りになりません。

待ちきれなくなった伊耶那岐神は、約束を破って御殿の中にお入りになりました。ところが、殿内は真っ暗です。
伊耶那岐神は左右に束ねた髪の左側に刺してあった湯津津間櫛(ゆつつまぐし)の男柱(櫛の両端の太い歯)を一本折って、それに、一つ火を灯しました。

すると、伊耶那岐神の目に飛び込んできたのは、腐敗して蛆(うじ)にまみれた、変わり果てた姿の伊耶那美神だったのです。
そして、伊耶那美神の体には恐ろしい雷神(いかずちのかみ)が成り出ていました。頭には大雷、胸には火雷、腹には黒雷、陰部には折雷(さくいかずち)、左手には若雷、右手には土雷、左足には鳴雷、そして右足には伏雷(ふすいかずち)がいました。

伊耶那岐神はびっくりして逃げました。ところが、醜い姿を見られた伊耶那美神は「私に恥をかかせたな!」と仰せになり、予母都志許売(よもつしこめ)という黄泉の国の恐ろしい醜女(しこめ)に後を追わせたのです。

伊耶那岐神は必死に逃げます。追いつかれそうになったので、伊耶那岐神は髪に巻き付けていた黒御蘰(くろみかずら)という蔓草(つるくさ)を投げました。すると、蔓が勢いよく茂り、葡萄の実がなったのです。醜女は葡萄にむしゃぶりつきました。

その隙をついて伊耶那岐神は逃げます。しかし、猛烈な勢いで葡萄を食べ尽くした醜女は、その後もしっこく追ってきました。
次に伊耶那岐神は、左右に束ねた髪の右側に刺してあった湯津津間櫛を、醜女に向かって投げ付けました。すると、今度は筍(たけのこ)が生えてきたのです。醜女は筍を抜き、次々と食べていきます。伊耶那岐神は、またこの隙に逃げました。

しかし、伊耶那岐神を追うのは醜女だけではありませんでした。八種(やくさ)の雷神と千五百の黄泉の国の軍勢も追って来ます。
どれも怖い顔をした悪霊です。伊耶那岐神は腰に刺していた十拳の剣を抜いて後手(しりえて)に振りながら走りました。うしろ手で何かをすることは、相手を呪う行為です。伊耶那岐神は、ようやく黄泉の国と現実の世界の境にある黄泉比良坂(よもつひらさか)に差し掛かり、そこに一本の桃の木を見付けます。急いで桃の実を三個取り、投げ付けると、どうしたことか、悪霊達はすっかり勢いを失い、逃げて帰りました。

桃の実に命を助けられてた伊耶那岐神は、桃の木に「私を助けてくれたように、葦原中国(あしはらのなかつくに)に住むうつくしき青人草(あおひとくさ)[人間のこと]が苦しみ悩む時、同じように助けなさい」と仰せになり、意富加牟豆美命(おおかむずみのみこと)と名前を賜いました。

ところが、最後の最後に伊耶那美神が、腐り、蛆がわいた自らの体を引きずりながら追って来ました。伊耶那岐神は、千人がかりでようやく動かせるという、千引の岩(ちびきのいわ)と呼ばれる巨大な岩で黄泉比良坂を塞ぎました。ちなみに、昔から岩石は悪霊邪気の侵入を防ぐものと信じられていました。

そうして、伊耶那岐神と伊耶那美神は、大石を挟んで向き合いました。伊耶那岐神が夫婦離別の呪文である「事戸」(ことど)を述べると、伊耶那美神は「愛しい夫がそのようにするのであれば、あなたの国の人々を一日千人絞殺しましょう!」と恐ろしい声をあげました。

それに対して伊耶那岐神は「愛しい妻がそのようにするのであれば、私は一日に千五百の産屋を建てよう!」と仰せになりました。
このようにして二柱の神は永遠に決別なさったのです。かくして、現世では一日に必ず千人が死に、千五百人が生まれることになりました。

黄泉の国に残った伊耶那美神は、黄泉津大神(よもつおおかみ)と呼ばれるようになり、また、その追いついたことをもって道敷大神(ちしきのおおかみ)と名付けられました。そして、黄泉比良坂を塞いだ大石を道返之大神(ちがえしのおおかみ)または塞坐黄泉戸大神(さやりますよみどのおおかみ)と呼ぶようになりました。

このように、伊耶那美神は黄泉の大神として、伊耶那岐神は現世(うつしよ)の大神として、全く別の道をお進みになることになったのです。

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  • 【追記】

    菊理媛神は、全国に広がっている白山信仰の主祭神であります。

    この菊理媛神は、『古事記』には記載がありませんが『日本書紀』の一場面にわずかに登場するだけです。
    ただ、そこでのこの神様の役割が興味深いのです。

    黄泉の国(死の国)から逃げ出そうとする伊耶那岐神とそれを追って来た伊耶那美神が黄泉比良坂で言い争いをします。
    そこに、黄泉の国に通じる道の番人である泉守道者と一緒に菊理媛神が現われて、両神の言い分を聞き、上手くとりなしました。
    それで伊耶那岐神は、無事にこの世に戻ることができたといわれています。
    ここでの伊耶那美神はあの世(死者の国)の代表者であり、伊耶那岐神はこの世の代表者です。

    そういう両者の仲介役として両者の言葉を聞き、調和を図る菊理媛神の姿は、神と人間の間に立って託宣を受ける巫女の霊能を連想させます。

    神名の「くくりひめ」の「くく」るとは、糸をくくるように「人々の願いを聞き入れて下さる」と言う意味があるそうです。

  • 菊理姫様.JPG


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